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にいがた健活講座「健康長寿とお口の健康」

日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科 

白野美和准教授

 

 しろの・みわ 1997年、日本歯科大学新潟歯学部卒。同大学歯学補綴学教室第3講座助教、同大新潟病院総合診療科2医長などを経て2014年から現職。07年より同病院在宅歯科往診ケアチームの一員として活動、高齢者らの歯科治療に当たっている。


 

歯失う虫歯や歯周病

食後の歯磨きが大切


 いつまでも健やかに暮らすためのヒントを探る「にいがた健活講座」が2月27日、新潟日報メディアプラス(新潟市中央区)で開かれました。日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科の白野美和准教授が、歯や口の健康や口腔(こうくう)機能の維持の大切さや、全身の健康との関わりについて語りました。


 歯を失う原因第1位は歯周病、次が虫歯。この二つで6割以上を占めます。

 虫歯はミュータンス連鎖球菌などの原因菌が歯に付着し、増殖する際にプラーク(歯垢)を形成。その中で、菌が食事などで入った糖を分解して酸を出し、歯の表面を溶かしてできます。生えたての歯はかみ合わせの面、生えそろった歯は歯と歯の間、高齢者は歯茎が下がり露出した根の部分が虫歯になりやすいので、気を付けましょう。

プラークはうがい薬やガムでは落とせず、歯磨きが基本。食後すぐにブラッシングしましょう。歯間ブラシやデンタルフロスの併用がお勧めです。


全身の健康に影響

口腔内の清潔維持


 歯周病菌は毒素を出して歯茎や歯を支える骨を破壊します。酸素がない環境で増殖でき、歯と歯茎の境目から出る血清タンパクを栄養源とするので、歯と歯茎の境目の溝を好みます。

歯周病の最大のリスク因子は「たばこ」。たばこには多くの有害物質が含まれています。中でも、ニコチンは血管収縮作用があり、歯周病に気付くポイントである歯茎からの出血が抑えられてしまうため、気付かないうちに重症化していることも。喫煙者は治療効果も出にくくなります。

 歯周病は誤って飲み込む「誤嚥(ごえん)」や血液を経由して全身に影響を及ぼします。

血液中の悪玉コレステロールなどが血管壁に付着してできる粥腫(じゅくしゅ)により血流が滞り、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化が引き起こされますが、この粥腫の中から歯周病菌が検出されたという報告もあります。


 糖尿病との関連も言われています。歯周病が進み炎症が続くと、炎症性サイトカインという物質が増え、血液中に流入。膵臓(すいぞう)から分泌されて血糖値を下げるホルモン、インスリンの働きを妨げてしまうため、高血糖となり、糖尿病に至ります。

 誤嚥性肺炎は、お口の中の細菌などが気管に入り発症します。高齢者に多いですが、お口の中を清潔にして菌を減らすことでリスクが下がります。要介護者の口腔(こうくう)ケアでは、喉の方に汚れを落とさないように拭き取ること。歯科医師や歯科衛生士に方法を教わるといいです。このほか、歯周病が認知症の悪化に関与している可能性も指摘されています。


口の衰えで虚弱も

体操や定期受診を


 健康と要介護の間の状態「フレイル(虚弱)」予防にも、お口の機能維持は不可欠です。お口の中に関心がなくなったり、虫歯や歯周病で歯を失うと、滑舌が悪くなったり、かめない食品が増えるなどして、口腔(こうくう)機能が低し、最終的にはそしゃく障害や摂食嚥下障害に至ります。自分の歯が少なくても入れ歯などで補い、舌や唇の動きや力も含めてトータルで機能を保ち、さまざまな商品をしっかり食べることができるお口を維持することが大事です。オーラルフレイル(お口の衰え)は近い未来に全身が衰えるサインなので、早期発見・対応が大切です。

 機能維持にはお口の体操も有効です。左右5回ずつ、舌を唇の裏側から頬側まで1周させる舌回旋運動は、舌の筋肉が鍛えられ、唾液も出てきて口の中が潤います。テレビを見ながらでもできますよ。

 歯周病や虫歯は生活習慣病です。リスクとなる生活習慣を減らしましょう。腫れや痛みなどの症状が出た時には、かなり進行した状態です。症状がなくても定期的に歯科を受診しましょう。お口の中の細菌を減らす「衛生管理」と、お口の機能を保つ「機能管理」の両方の管理が、全身の健康を保つことにつながります。

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