にいがた健活講座 -プロローグ-  「健康寿命をのばすための科学」

新潟大学大学院医歯学総合研究科環境予防医学分野

中村和利教授

 

 なかむら・かずとし 1962年、本県出身。新潟大学医学部、University of Michigan School of Public Health卒。加齢性疾患(認知症、骨粗鬆症など)の予防医学研究に従事。現在、県北地区で「村上・関川・粟島健康コホート調査」を継続している。2011年から現職。



無理しないで楽しく
よい生活習慣継続を

 いつまでも健やかに暮らすためのヒントを探る「にいがた健活講座」のプロローグが9月26日、新潟日報メディアプラス(新潟市中央区)で開かれました。新潟大学大学院医歯学総合研究科の中村和利教授が講演し、オンラインを含め約140人が、健康寿命を延ばすためのこつを学びました。また、血糖値と骨密度を測定する「健康チェック」も行われました。


 健康寿命とは、日常生活に制限がない期間のこと。新潟県では健康寿命と平均寿命の差、つまり日常生活に介護などが必要な期間が約10年あります。この差を縮める必要があります。健康寿命を延ばすには、要介護にならないことです。その原因である認知症、脳卒中、骨折などを防ぐことが重要です。

 2011年から村上市、関川村、粟島浦村の40~74歳の1万4千人以上を対象に「村上健康コホート調査」を実施しています。コホート調査とは、ある集団を5年、10年と調べ、病気との関連を探るものです。認知症、骨折、膝関節症、要介護のリスク要因とビタミンDの効果を調べています。

 脳卒中予防では高血圧を治すことが重要です。私は55歳の時、高血圧になりました。初期段階だったので、筋力強化のために始めたウオーキングを頑張ることにしました。毎日は無理だし、ただ歩くのはつまらないので、週1回、2.5㌔先のスーパーまで歩いて買い物へ行くことにしました。できない日もありますが、やらないよりはいいと考えてやっています。お陰様で血圧は正常になりました。始めることが大切で、それが結果につながるのでお勧めです。


骨折の予防へ期待
ビタミンDに注目

 ビタミンDは、骨折をはじめ、がん、糖尿病、歯周病の予防に加え、うつや認知症への効用が期待されています。食物摂取以外に、紫外線に当たると皮膚で合成され、体内で活性型などに変わり、カルシウム・骨代謝の調整、腸でカルシウム吸収の促進、免疫力アップなどに作用します。体内のビタミンDの量は日照時間と連動しますが、村上ではサケをよく食べるため、冬でも維持されていました。サケや青魚はビタミンDが豊富で、特にシロザケ(秋鮭)には多いのでお勧めです。

 骨折に関しては、カルシウムに加え、納豆と野菜に多いビタミンKにも予防効果があることが判明しました。

 変形性膝関節症は、女性に多く、加齢と肥満が関連しています。過体重ほど膝が悪くなるので注意しましょう。また、お茶をよく飲む人ほど変形性膝関節症が少なかったです(男性において)。カテキンが酸化ストレスを抑制し、リスクを下げているのかもしれません。男性の方が喫煙、飲酒による酸化ストレスが多いため、カテキンが効いたと考えられます。


運動や知的な活動
認知機能低下防ぐ

 認知症とは、記憶力、判断力や会話能力などの認知機能が低下し、社会生活に支障をきたす状態のことです。認知症の3分の2はアルツハイマー病と呼ばれるもので、予防因子として運動や知的活動、学習など、促進因子として加齢や糖尿病などがあります。村上コホート調査では、若い時から体重が減った人ほどもの忘れ傾向が多かったです。体重の減少で認知機能が悪くなりやすいと考えられます。また、コーヒーを1日3杯以上飲む人は、飲まない人より要介護認知症になる割合が半数近く少なかったです。緑茶にも同様の効果があるかもしれません。そのほか、30分未満の昼寝は、認知機能低下を予防する可能性があることも分かりました。

 健康寿命を延ばすには、これまで通りのよい生活習慣が基本ですが、認知症や骨・関節の病気の予防に注目すると、ポリフェノールやビタミンD、短時間の昼寝など、新たな効果が分かってきました。それらをバランスよく扱うことが大切です。いろいろな信頼できる情報を得て、無理せず楽しく、自分なりに工夫してやってみることが健康寿命の延伸につながります。